【昭和のテロップは紙だった】ライブ(トリキリ)テロップとは?

前回【昭和のテロップは紙だった】と題して、紙のテロップ(スーパー)についてのお話をしたところ、たくさんの方が読んでくださいまして、また、ツイッターにコメントもたくさんお寄せいただきました。本当にありがとうございます!\(^o^)/

あのあと「そういえば実際にオンエアで使用した、当時の手書きテロップが手元に何枚か残っていたなあ」というのを思い出しました(すっかり忘れておりました、すみません)。せっかくなので、ここで「オペーク用紙」の実物の写真をご覧いただこうと思います。

これは私の先輩が書いたものです。昔は古い洋画をよくやっていたので、エンディングで使われたものだと思います。

つや消しの感じと厚みの感じが伝わるといいのですが、いかがでしょう?よく見ると、うっすらアタリ(下書き)線が見えるかと思います。これは鉄筆(てっぴつ)というものを使って、うすーく引っかき傷のような感じでアタリをつけていくのです。鉛筆だと光って画面に映ってしまうことがあるので、鉄筆を使います。

これが鉄筆。ペンのようですが、先が金属で出来ています。「ガリ版を切るのに使う」といえば、おわかりになる方もいらっしゃるでしょう。若い方は、そもそも「ガリ版って何?」っていう話ですが(すいません、興味のある方はググってみてください、笑)。今はなかなか売ってなくて、画材屋さんでようやく見つけたものです。

写真を拡大できる方は、ぜひテロップの「FIN」の文字を大きくして見ていただきたいのですが、多少修正しているとはいえ本当に線が綺麗で、角もピシッとしていて、職人の仕事だなぁと感じます。今、私の模写を先輩に見せたらきっとお叱りを受けることでしょう(汗)。

 

ライブ(トリキリ)テロップとは

さて、今回は【昭和のテロップは紙だった】第2弾です。第1弾では、テロップの「スーパー(黒いバックが消えて白い文字が残るもの)」についてお話しましたが、今回はスーパーの対義語である「ライブテロップ(ライブ)」のお話をしたいと思います。「ライブ」は「トリキリ」とも言うんですが、「トリキリ」は、Wikipediaではこのように説明されています。

トリキリ(撮り切り、録り切り)とは、映像分野において被写体が画面全体に映っている状態を指す。

「トリキリ」という言葉は、映像全般で使います。例えば、

こういったプレゼントの商品を撮影したものなどを「トリキリ」といいます(画像は「象印クイズヒントでピント」より)。画面全体に商品が映っていて動かない映像です。

これをテロップに置き換えると(以下もWikipediaから引用)

電子テロップ・タイトルにおいては、実写映像の上に文字や図版を合成するスーパーに対し、画面全体をCG(キャラクタジェネレータあるいはコンピュータグラフィックス)による映像のみで構成する「電子フリップ」などをトリキリと呼ぶ。

というわけで、画面全体に映っていて動かないテロップのことを「ライブ(トリキリ)テロップ」といいます。Wikipediaの説明は電子テロップになっていますが、テロップが紙だった頃から「ライブ(トリキリ)テロップ」という言葉は使われていました。

と、ここまでお話ししましたが、実は「ライブ」という言葉は一般的ではないのかもしれません。いろいろ調べてみても「トリキリ」のことを「ライブ」と呼ぶという文献を見つけることはできませんでした。しかし私の働いていたテレビ局ではそう呼んでいましたので、私の記憶を書き留めるという意味で、このブログでは「ライブ(トリキリ)テロップ」と表現したいと思います。

(ちなみにTBSさんでは現在、“画面全体を切り取るものを「CG」と呼び、文字など画面に合成させるものは「テロップ」と呼んでいる”そうなので(“テロップやワイプって、どうやって作ってるの?「王様のブランチ」技術チームに聞いてきたより抜粋)各局で呼び名は違うようです。この記事、長いですがすごく面白いので、テロップに興味のあるかたはぜひ一度読んでみてください。)

また、このブログは内容をテロップ(特に紙の)に特化していますので、「ライブ(トリキリ)=テロップのこと」ということでお読みいただければと思います。フリップ(紙でできた大きいボード)を使う場合もありますが、それはまた次の機会にお話しします。

 

アニメのエンドテロップや動かないCM

さて、しかし、やはりライブ(トリキリ)と言われてもまだピンとこないよ~と思われるかたも多いですよね。でも実は、みなさん結構目にされているものがあるのです。

こういったアニメのエンドテロップをご覧になったことがあると思います。これは以前さくらももこさんのお話のときに書いた、手書きのライブ(トリキリ)です。コンピューターで作ったものは、今でもよくアニメ番組の終わりなどで使われていますが、昭和の頃は一枚一枚、絵の具を使って手書きで作っていました。

アニメやドラマのオープニングやエンディングのライブ(トリキリ)の多くは、使い回しをします。第1弾でお話したように、紙のテロップはホルダーに入れて順番にセッティングをして送出するんですが、毎日オンエアするアニメやドラマは、数日分のテロップをあらかじめ準備しておく必要があったので、同じものを数枚作ってほしいという発注も結構ありました。今はデータをコピーすれば同じものは無限にできますが、当時は本当に大変でした。みなさんもお気づきとは思いますが、ライブ(トリキリ)を書くのはものすごく時間がかかります。なので、背景は先ほどの「オペーク用紙」から好きな色を選んで(黒だけでなくいろんな色があったので)できるだけ簡略化するなど、時間短縮になるようにいろいろ工夫していました。コピー機がテレビ局に1台しかないような頃だったので、イラストを1枚書いてオペーク用紙に重ね、上から鉄筆でなぞって何枚も同じ絵を描いたりしていました。

アニメの他にも、

テレビ局のロゴが入ったお正月用のものや、

見るのが怖い(笑)「しばらくお待ちください」

テレビ局のコールサインが書いてあるもの。この「モフテレビジョン」の社屋は手書きですが、写真に文字を書き込んで作るものもありました。

写真入りで思い出されるのは、こういった動かないCMですね。これはパソコンで作っていますが、実際に紙で作る場合は、水色のオペーク用紙に写真を貼り、その上に文字を直接書き入れていく、といった作り方をします。お店のロゴの部分は赤のオペーク用紙(少し薄いシール状のもの)を貼り、ロゴを書き入れます。

映画番組などでも、その日オンエアする映画のタイトル、声優さんやスタッフさんの名前を入れたもの、来週の予告、プレゼントなどなど、何十枚もライブ(トリキリ)を使っていて、それを毎週書いていました。ほかにもたくさんの番組があったので、何人かで手分けして書いていたとはいえ、当時のタイトルさんは本当に大変だったと思います。

 

ブルーバックトリキリとは

さて、先ほどから「ライブ(トリキリ)は画面全体に映っていて動かないテロップのこと」と言ってきましたが、中にはライブ(トリキリ)にスーパーを合成した組み合わせ技のものもあります。その中でもよく使われるのは、背景がブルーの「ブルーバックトリキリ」というのものです。(昔はまれにグリーンや赤などもありましたが、最近はブルーだけになっているようです。)

ブルーバック(無地のブルーの画像)は、各放送局であらかじめ用意されていて、そこへ全面テロップなどをスーパーで合成します。「出来あがりはライブ(トリキリ)になるんだけど、作成するのはスーパーでよい」というものなので、早く作れる「ブルーバックトリキリ」は、いろいろな場面でよく使われていました。

 

提供テロップ

提供テロップは「ブルーバックトリキリ」で作ることが多いもののひとつです。基本的にはスーパーで作るんですが、番組によってブルーバックトリキリで出したり、スーパーで出したりします。提供は、大げさなようですが「民間放送の生命線」です。スポンサーのロゴが欠けたり消えたりして読めないということがあると大変なので、背景がブルーの無地で、ロゴがはっきりと見やすい「ブルーバックトリキリ」がよく使われていました。

最近では、スタジオの背景をボカして提供を乗せたり(ボカシが簡単にできるようになったため)、テレビの画質が格段に向上したということもあったりして、提供テロップをスーパーで乗せることが多くなりました。しかし、地方局では地元のスポンサーがついていたりして提供を差し替えすることがあり、「ブルーバックトリキリ」の提供を出しているところがまだまだあるようです(個人的には、あの「いきなりブチっとブルーバックの提供に差し替えされる感じ」がものすごく好きです、笑)。

※↓この提供は手書きのパロディーです(笑)。本物の提供は、もちろんちゃんとしたロゴから起こします。

このような、スーパーで作った提供テロップをブルーバックに乗せると

「ブルーバックトリキリ」の提供になります。

「ブルーバックトリキリ」の例としては、他にもこのような

来週の予告テロップなどもありましたね。プレゼントの当選者なんかもこういう感じでした(こういうスーパーは写植で作っていました)。

あと昭和の頃は、よくアナウンサーが顔出しをしないニュースがありましたが、このようなニュースのサブタイトルなんかも「ブルーバックトリキリ」でした。

ちなみに、ブルーの色に特に決まりはないようです。各局見くらべてみると、ブルーの色が微妙に違っています。テレビ局ごとに、一番いいと思われるブルーを選んでいるようです。

 

ブルーバックはなぜブルー?

ブルーバックと言えば、今年の3月に、MBSラジオ「次は~新福島!」に出演させていただいた時、福島暢啓アナウンサーから「ブルーバックは、なぜブルーなんですか?」と質問があり、その時はちゃんと答えられなくて申し訳なかったのですが、あのあとフォロワーさんのイサオ (@isao1965)さんから

 “カラーテレビ” が発売された頃は “白黒テレビ” で観ても成立する“色使い”で製作する為に「“白黒テレビ” でも必ずチェックしていた。」と “東放学園” の講師から聞きました。

という情報をいただきました。ブルーバックを白黒テレビで見たときに「コントラストを考えて、一番きれいで見やすいグレーになるブルーを選んだ」ということのようです。

 

このあとで、私も仕事を始めた当時、同じようなことを言われたのを思い出しました。師匠(当時の社長)いわく「カラーのライブ(トリキリ)は、白黒テレビでもきれいに見えるように、コントラストに気をつけて書きなさい」というものです。私の入社した昭和の終わり頃には、もうほとんど白黒テレビはなかったのですが「まだ見ている人もいるかもしれないから」という配慮だったのでしょう。パステルカラーのかわいいテロップを書いたらすごく怒られた、という苦い思い出があります(笑)。パステルカラーを白黒テレビで見ると全部グレーになって、何が書いてあるか全くわからなくなってしまうからです。でもその失敗のおかげで、メリハリの効いたテロップを作ることを心掛けるようになりました。

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ライブ(トリキリ)のお話、いかがだったでしょうか。ご質問・ご感想などいただけますと、筆者がとても喜びますので(笑)、このブログやSNSのコメント欄にぜひお寄せください。